◆Interview No.4 渡辺 正大さん

「今度″男性の育児休暇セミナー″についての講座をするので来ませんか?」と連絡をくれたのは、出版社にお勤めの渡辺正大さん。以前お会いしたときは「静岡県のとある自治体の街作り支援の活動してるんですよ」と言っていたような。
「あれ?渡辺さん出版社に勤めていたよね?男性の育児休暇、街作り支援?いったい渡辺さんいくつ仕事をしてるんだろう?」とにかくその働き方が気になったので、早速渡辺さんがコーディネートしたセミナーに突撃してみました。

訪れたのは豊島区にある男女平等「推進」センター「エポック10」
男女共同参画社会の実現に向け、講座、講演会などの開催、情報誌の発行、学習相談、区民や団体の交流の場や機会を提供しています。

男性の育休は義務化しないと取らない?取れない?

今回のセミナーは「男性の育休は義務化しないと取らない?取れない?」というテーマで、育休の現状から今後の課題までグループワークを交えながら幅広く考えるというもの。
講師にNPO法人フローレンスの穂積勇起さんを迎えて開催されました。

みなさんは”育児休暇”と”育児休業”の違いをご存知でしょうか?
同じ育休と呼ばれるこの2つ、実は大きく違います。

「育児休暇」とは育児をするために休暇を取得すること。あくまで「休暇」ですから。法的に定められた制度ではありません。基本的に無給と考えてよいでしょう。
一方、「育児休業」は育児介護休業法という法律によって定められた休業制度のことです。
理解すべきポイントは大きく次の3つ。
①期間は原則1年間まで。(条件によって延長も可能)
②「育児休業給付金」が支給される
③「社会保険料と所得税」が免除される。

ではその育児休業の男性取得率は現状どのくらいかというと、2018年度時点で6.16%とかなり低い結果です。しかも取得できても、全体の71.4%が2週間未満の取得というデータも出ています。
取りたくても取れない・・・それが日本の男性育休の現状のようです。
そんな現状をうけて、男性の家庭進出の起爆剤となるべく、政府も男性育休の義務化を進める方向で動き始めています。
(※ここでいう義務化とは本人が取得する「義務」ではなく、会社が取得を促す「義務」のことです。)


(NPO法人フローレンスの穂積さん。最新のデータを交えて、男性育休の現状を分かりやすく伝えてくださいました。)

そもそも育休制度の話の前に、日本では未だに男女で家事・育児への関与に圧倒的な差が存在しています。
男性が家事・育児に費やす時間は1日平均30分程度。(総務省:社会生活基本調査(平成28年度)データ)これは共働き世帯でもほぼ変わらない現象と、聞くとちょっと驚きですよね。

こうした女性への家事・育児の集中がもたらす弊害としては、女性の不本意な離職、子供の数の減少、産後うつなどが考えられます。
離職については、経済的な影響も大きいですよね。各家庭における影響だけでなく、今後ますます懸念される「人手不足」問題を考えると、女性の離職は貴重な働き手の損失とも考えられます。
子供がいるいないに関わらず、日本に住む全員が関心を持つべき問題であることをあらためて考えさせられました。

その他にも、男性が育休を取得しなかった理由や、職場環境の現状説明など、さらに詳しいお話も。
最後は、実際に出産を控えている夫婦が育児休暇取得1年を考えているというストーリーに沿って、各関係者がどのように考えるかのグループワークを行いました。

穂積さんのメッセージで一番心に残ったのは、育休を取得するかしないかよりも、夫婦で出産後のそれぞれの生活・働き方を話し合っておくこと、答えは結局パートナーのなかにしかないということです。
「育休の取得はあくまで”手段”」であって、育休を取ったとしても、その後男性が家事・育児にかかわる機会が増えなければ、女性側の負担は減らないですしね。

そもそもなんで今回のセミナーを企画しようと思ったんですか?

さてそんな充実のセミナーをコーディネートした渡辺さん。このセミナーを企画しようとしたきっかけはなんだったんでしょうか。

「もともと新聞記者をやっていて、今も出版社というメディアの世界にはいるんですが、担当は人事管理系の部署なので直接″書く″ことには携わっていません。
今回のセミナーも、東京新聞の望月さんの講演会に行ったときに、区民講座の募集をしていて。おもしろそう、僕も何かトライしてみるかなというのがきっかけだったんです。何にしようかと考えていたときに思い浮かんだのが育児休暇を取った経験。
子供が生まれたときに僕は3ヶ月育児休暇をとったんですが、実際取得してみると気づいたことがたくさんあって・・・男性の育児休暇!これで講座を企画してみようと思ったわけです。
なにかおもしろいことを見つけると調べずにはいられない感じかな?
そうそう、今前回の東京オリンピックについても調べてるんですけど、開会式の前に前夜祭があったらしいんですよ。そこにはちゃんと聖火台まで設営されていたみたいで・・・」

次から次へとお話がでてくる渡辺さんのワクワクした表情に、こちらまで楽しい気分になってきます。
どうやら出会いとひらめき、そして知的好奇心が、渡辺さんの活動に繋がっているようです。


(土曜日の昼下がり和やかな雰囲気で始まったセミナー。もちろん男性参加者の姿も!!)

牛って喘息(ぜんそく)になるんですよ?!

-そういうピーンとくるというか、アンテナみたいなものは、やはり新聞記者時代に磨かれたんですか?-

「そう思うでしょ?でも原点は小学生の頃にあるかも。僕結構変わった子供だったんですよ。
夏休みの自由研究ってありましたよね?僕の実家は東京都内なんですが、ある日近くに牧場があることを知って、しかもそこにいる牛が喘息になるって聞いて・・・”牛が喘息??”これは調べなきゃと思って図書館に行きました。でもその図書館には関連する書籍がなくて、図書館司書の人に、″農協に行ったら何かわかるかも?″と言われて、最終的にほんとに農協にまで行きました(笑)。
急激な宅地化や高速道路の建設などで、本来この牧場のあるところは動物の住む場所じゃないということ。だから牛も喘息になることがわかりました。
調べたことを大きな模造紙1枚にまとめて、自由研究として提出したんですが、周りの大人たちはびっくりしていましたよ。
よくそこまで調べたねぇって。およそ小学生が読まないであろう、マニアックな文献なんかを見たくなっては、関連施設に突撃していましたから。」

渡辺少年の探求魂に脱帽・・・

「最近はネットでほとんどのことが調べられるでしょ?でも僕のファーストアクションは今でも電話だったりします。そして会いに行っちゃう。もちろん事前準備にネットや書籍を利用することはします。でも、ネット情報の信憑性も微妙だし、書籍も個人的な見解が入っていたり、あと古い出版のものだと、今みたいにあまり情報のチェックが入ってないから結構あやしいものもあるんですよ。テキスト的なスタディより、インタビューの方がやっぱりおもしろいですよ!」

「あとよく自治体の広報誌をチェックしますね。意外と駅のパンフレット置き場にもおいてあるんですよ。だから自分の住んでいる地域以外の広報誌も簡単に手に入れることができます。ネットや書籍にはない地元ならではの情報が掲載されていて、そこから面白いネタを拾うのが結構おもしろい!」

渡辺さんのお話を聞きながら思ったのは、確かに″温度″って大切だということ。直接会うから、その人の間に信頼感が生まれる、信頼感があるから、メールでは聞き出せない話をきくことができる。メールは便利だけど、温度がないんですよね。
たとえば「どうしても知りたいんです」という言葉。
メールで伝えても、どのくらい真剣なのか、声のトーンも、表情もみえないので温度が感じられない。
その人を感じることができるから、その人に話したくなる。
コミュニケーションの基本は、今も昔もやっぱり″五感″なんだと思います。

-これだけ完成度の高いセミナーをコーディネートされるんですから、ゆくゆくはこれを仕事にしてくんですか?-

「いやこれを仕事にするつもりは今のところありません。僕にとって今一番たいせつなのは”家族と過ごす時間”。自分が求めるライフスタイルにあった働き方ができる職業だったらどの仕事にも可能性は感じるかな。」

なるほど、〇〇という職業名から仕事を探すのではなく、自分が求めるライフスタイルにフォーカスして仕事を選ぶ。
自分の可能性を「職業」という名前で狭めない。とても素敵な考え方ですね。
まずは「職業名」は横に置いておいて、自分が一番大切にしていることはなにか、どんなライフスタイルを送りたいかをリストアップしてみる。
それに合う職業を考えてみる。
もしかしたら自分が思いもよらなかった職業が、そこにはリストアップされるかも?!

また、今回の渡辺さんの活動を通して、自分の住んでいる地域のことに興味を持つこと、行政に興味を持つことは、働き方へのヒントにもなるなと感じました。
世の中の仕事って「誰かの困っているを解決する」または「誰かの嬉しいをサポートする」この2つだと思うんです。
特に前者については、地域や行政に興味を持つことでまだまだ発見できる新しい仕事があるかもしれません。もちろん後者についても。

働き方には、まだまだ可能性がゴロゴロしてる。渡辺さんからそんなメッセージを感じたインタビューでした。

 

Key word
渡辺正大さん
ジャーナリスト。新聞記者として、事件事故取材を主に担当。
早稲田大学大学院修士号取得。ジョージタウン大学若手リーダーシッププログラム参加、ボッシュ財団ジャーナリスト育成プログラム参加。
豊島区保育の質ガイドライン委員などを歴任。
今回の育休セミナーの他にも、自身が深刻なマンション管理問題に取り組んだ経歴から、東京山の上大学主催のマンション管理講座の講師として登壇も。

 

NPO法人フローレンス 穂積勇起(ほづみゆうき)さん
妻と娘2人の4人家族。元国家公務員で、現在はこどもの社会問題解決に取り組むNPO法人フローレンスに勤務するとともに、子育て当事者の声を政治や行政に働きかける「未来子育て全国ネットワーク」に所属。それぞれの立場から父親の家庭進出、子育て世代の政治参画など子育てに関する課題解決に取り組んでいる。

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